熄えないで
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───ということがあって、この勉強会が開催されていたわけなんだけど。
吉乃くんは、自分でいうだけあって本当に頭が良かった。
英語も数学も、3年生のテスト範囲でもちゃんと理解できていて、先生よりわかりやすいんじゃないかと言うほどわかりやすく丁寧に教えてくれた。
蒼志くんがいたこともあってか、気まずさは知らず知らずのうちに薄れていた。
…まあ、吉乃くんが普通にしているから私も普通にしていないといけない、という使命感もあったのだと思うけれど。
「あ、やばい」
時刻が18時を回ろうとしていた頃。たった今届いたであろうメッセージを開きながら、蒼志くんが声をあげた。
「ごめん吉乃、先輩。俺、帰んないと」
「なにかあったの?」
「なんか、母さんがこのあたりで買い物してるみたいで。そろそろ帰ってくるなら、荷物持ちになってくれって…」
なんだその可愛い理由は。
そして荷物持ちを頼まれてすぐに引き受ける蒼志くんもやさしいなあ…と、全然関係ない私までほっこりしてしまった。
そういうことなら引き留めるわけにはいかない。
吉乃くんも私と同じ考えだったようで、「じゃあね蒼志」と短く返事をしていた。