熄えないで
私が再び本を閉じたのは、あれからちょうど5分後の事だった。
ガタ…と音を立て席を立つ。
さて、彼はどこにいったのだろう。
この高校の図書室はわりと蔵書数が多いので、高さのある本棚がいくつも並べられている。
本を片手に図書室内を歩き回るのは、まるでかくれんぼでもしている気分だった。
「おーい…」
小さく声を出してみても返事は返ってこない。
この学校の図書室の広さを舐めていた。どうせ5分なら一緒に座って待ってもらった方がよかったかもしれない。
彼を探しているこの時間は、多分無駄に値する。
どこいったんだ、本当に。
「…ヨシノ、」
ふと、彼の名前を思い出す。
苗字が同じなのは単なる偶然だった。
吉野 二千花(よしの にちか)というのが私の名前。
友達も先生も私のことを苗字で呼ぶ人は多いので、茶髪くんがはじめに「ヨシノ」と呼ぶ声を自分に向けられたものだと勘違いしてしまった。
ヨシノ、ヨシノ……
「…ヨシノくんどこ……」
「後ろです」
「っうわあ!」