熄えないで
最近分かったことがある。
吉乃くんは、多分、天然たらしだ。
深く考えないまました発言が女の子のこころを打ち落としているんだと思う。
口数は決して多くないのに、簡単に人を黙らせる。
容姿も端麗だし、ぜったいモテるだろうなぁ───って、吉乃くんには彼女がいるんじゃないか、そういえば。
その事実を再確認した途端、隠れていたはずの罪悪感が一気に押し寄せる。
“彼女”がいる人とキスをした。
それがもし、“彼女”の耳に届いてしまったら。
今こうして送ってもらっているところも、もし“彼女”に見られていたら。
「先輩」
そんなことを考え出して止まらなくなった私の思考回路を遮るように吉乃くんが口を開く。
「俺、先輩に嘘ついてることがあるんです」