熄えないで
「蛍原、その写真消して」
口を開いたのは吉乃くんだった。
図書室で成川くんと遭遇した時もそうだったけれど、彼は、一般的に修羅場と呼ばれる状況でも全く動じない。
スマホを握る蛍原さんに、吉乃くんがもう一度「けして」という。
責めも焦りも怒りも、なにも含まれていないような、…すこしだけ呆れたような、そんな声色に聞こえた。
「ああ、山木は先輩側の人だもんね。大丈夫、あんたのことを悪いようにはしないよ。山木は大事なトモダチだから」
「その写真、何に使うつもり?」
「かいちょーに見せる。吉野先輩はこういう女だから早く別れた方が良いですよって教えてあげるの」
かいちょーに見せる…か。
それは、残念ながら無駄なことだ。
ちらり、吉乃くんに視線を向けると、彼と目が合った。どうやら彼も同感のようだ。
「それ、無駄だからやめたほういい」
「はー?山木ね、そんなのであたしが頷くわけ、」
「会長はもう知ってる。俺と二千花先輩が浮気してるかもって、蛍原に言われなくたって分かってるし、それで2人は今距離置いてる状態だから」
「…、は」