熄えないで
突然後ろから掛かった声。
思わず大きく肩を揺らして声を上げれば、彼は「しー」と唇に人差し指を当てていた。
「図書室では静かにしないとダメですよ」
「…ごめんなさい」
君が後ろから急に声をかけてきたせいだよ、とはいえず謝ると、彼は「いえ」と軽く返した。
「読み終わりました?」
「あ。うん、お待たせしました」
手に持っていた本を渡す。ヨシノくんはそれを受け取ると小さく笑みをこぼした。
「友達は先に帰っちゃったの?ごめん、待たせちゃって」
ふと、さっきまで一緒にいた茶髪くんの姿がないことに気が付いた。
「あー、蒼志(あおし)のことですか?」
「名前まではわからないけど、さっきまで一緒にいた男の子」
「帰りました。あいつ、1分でも待つの嫌いなんですよ」
せめて1分は待ってほしいところだけど。
そういえばヨシノくんは「ほんとですよね」と言って笑う。