熄えないで




突然後ろから掛かった声。
思わず大きく肩を揺らして声を上げれば、彼は「しー」と唇に人差し指を当てていた。




「図書室では静かにしないとダメですよ」

「…ごめんなさい」



君が後ろから急に声をかけてきたせいだよ、とはいえず謝ると、彼は「いえ」と軽く返した。



「読み終わりました?」

「あ。うん、お待たせしました」



手に持っていた本を渡す。ヨシノくんはそれを受け取ると小さく笑みをこぼした。



「友達は先に帰っちゃったの?ごめん、待たせちゃって」



ふと、さっきまで一緒にいた茶髪くんの姿がないことに気が付いた。



「あー、蒼志(あおし)のことですか?」

「名前まではわからないけど、さっきまで一緒にいた男の子」

「帰りました。あいつ、1分でも待つの嫌いなんですよ」



せめて1分は待ってほしいところだけど。
そういえばヨシノくんは「ほんとですよね」と言って笑う。


< 9 / 205 >

この作品をシェア

pagetop