熄えないで
「先輩、見すぎです」
「え」
「…実は蒼志がタイプとか言うのやめてくださいね」
そんなに見入っていたつもりはなかったんだけど。
吉乃くんすこしだけ顔を歪めてそういうものだから、条件反射で「ごめんね」と謝る。
残念ながら蒼志くんは私のタイプではない。
……って、もちろん蒼志くんのほうも私のことなんてタイプでも何でもないと思うけれど。
蒼志くんは客観的にみて爽やか系のイケメンだと思う。元気でエネルギッシュでフレンドリー。
まるで小学4年生で止まっているかのような思考回路も、可愛らしくてもっと見ていたいと思う女の子が多そうだ。
───けど。
「私、どちらかというと吉乃くんのほうがタイプ」
本が好きだし、落ち着いているし、黒髪が良く似合う。客観的にも、主観的にもとても好感がもてるのだ。
あくまで蒼志くんと吉乃くんの2タイプだったら、という話であって、蒼志くんのことが嫌いとか吉乃くんが好きとかそういうことではないけれど。