泡沫夢幻
「っ、なんで兄貴が…」
警察からの電話を受け急いで総合病院へ向かう。
部屋の電気もそのままに
とりあえず携帯と家の鍵、自転車の鍵を持って
バタンッと大きな音を立てて玄関の戸を閉めた。
ガチャリ、としっかり鍵をかけ、
自転車に乗り、急いで総合病院へ向かった。
天気予報が当たり降り続いている小雨か、
急いで走っているからかいている汗か、
嫌な予感からかいている冷や汗か、
病院に着くころには自分では分からないほど全身がびしょ濡れだった。
電話で聞いた部屋にたどり着き、
入り口付近で肩で息をしながら呼吸を整えていると
「常盤奏さんの親族の方ですか?」
と、タオルを持った優しそうな男性警察官が俺に近寄りながら聞いてきた。
「はい、弟の常盤駿です」
「ご両親は?」
「…いません」
タオルを受け取り、濡れた身体を拭きながら
消えそうな声で返す。