泡沫夢幻
「昨日までしっかりと話せなかったのはこれを回収していたからだ」
そう言って段ボール箱から取り出したのは
黒い小さな物体。
「盗聴器だ」
恐らく駿が中学生の頃につけられたんだろうと乾いた声で笑った。
そして、すぐに真顔に戻り
「お前の中学の同級生に楠木耀という男はいなかったか?」
と聞いてきた。
「あぁ、いるよ。
京成高校に行ってサッカーやってるけど何?」
そう聞き返すと、
「そうか…近くにはいないのか。
あ、いや、あいつはすげえ奴だ。
彼を尊敬している。
何かあれば頼るといい」
そう意味深に呟き、口を閉ざす。