泡沫夢幻


「駿、母さん振り回すな」
奏がそう言いながら駿の手を繋いでいない方の手を取った。

「俺と一緒に行くか?」
「おうっ!」
そう言って2人は先へ先へと歩き出す。

「母さん…いや、、百合。大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。奏にはいつも気を遣わせてしまって申し訳ないわ」
私が声をかけると百合は前を行く2人の背中を愛おしそうに見つめながらそう呟いた。



そういえば駿は母さんの旧姓まだ知らなかったよな。
「花野 百合」

お花屋の椿さんが百合のことをはなちゃんと呼ぶのは妻の旧姓から来ているんだ。
高校時代、百合と椿さんの同級生に「ゆり」という名前の人が5人ほどいたのが原因だな。

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