泡沫夢幻


駿は覚えているかな。

イルカショーが終わって帰ろうとしたときのことを。


席を立って館内に戻ろうとしたとき、
1人の女の子が入り口で泣いていたんだ。

きっと両親と離れて泣いているのだろう。

奏はその子に気づくと真っ先に俺に言って係員を探そうとした。

そして駿、お前は母さんの手を握っていた左手を離し、
真っ先に泣いている女の子に寄り添ったんだ。



私はあのときのことをよく覚えているよ。


「神崎悠里」
その女の子は泣き止んでそう名乗った。

そして私と妻はその名前を聞いて「神崎組」を思い浮かべた。

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