泡沫夢幻
神崎悠里と名乗ったその子を迎えにきたのは
トオルという名の若い男だった。
「悠里様っ!」
黒いスーツを身に纏い、汗びっしょりで女の子の名前を呼ぶ。
「トオル!」
さっきまで泣いていたはずの女の子が
嬉しそうにその男の名を呼んだのは今でも覚えている。
「悠里様、こちらは?」
トオルが駿を指して尋ねる。
「わかんないけどゆーりが泣いてたら来てくれたの!」
そう神崎さんが答えるとトオルは駿ににっこり笑いかけ、
それからその笑顔のまま私を見た。