泡沫夢幻


兄貴の葬式が終わったある日、
誰から聞いたのかはわからないが、
久しぶりに父さんから連絡があった。

それは珍しくボイスメッセージだった。


「遅くなったが奏が亡くなったと聞いた」
「まだ帰れそうにない、本当にすまないがもう少しm、うっ」

ブチッという音とともにそこで音声が途切れた。


「なんだよ、すまないって」
静かな空間に弱弱しく呟いた。
この声は誰にも届くことはない。


どこで何してんだよ、父さん。
早く帰ってきてくれよ。

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