泡沫夢幻
俺は1人、父さん、母さん、そして兄貴と来たいつかの花火大会を思い出していた。
「パパ!イチゴ味のかき氷食べたい!」
「駿はほんとにイチゴ味のかき氷が好きなのね」
微笑みながらそう話す母さんと
母さんの乗る車いすを押す兄貴。
俺のためにイチゴ味のかき氷を買ってきてくれた父さん。
今の俺には何もない。
何もないんだ。
「駿?大丈夫か?」
いつの間にか辺りは人が少なくなっていて
心配そうに俺を見つめる陽菜と颯太がいた。
俺の頬は冷たく湿っていた。