泡沫夢幻


話し合いの結果、
私たちはトオルの狙いはそのネックレスにあることを再度共有し、トオルから神崎さんを守ることを決めた。


「家族からもらった大切なものなら守るしかないっしょ!」
仁志はそう言ってうつむきながらごめんねと何度もつぶやく神崎さんの肩をバシバシと叩く。


神崎さんを龍姫にすることでトオルから守ることはできるが
どんな手段でどんなことをするか予測できないトオルから守り切るにはリスクが多すぎる。
そのため、私たちは1つの箱を用意して、その中に神崎さんが1番大切にしているネックレスを入れて守ることを決めた。

そしてダミーの鍵を用意し、幹部全員に配った。その箱を開けられるのはそれらのうちどれか1つの鍵で、念入りにシャッフルしたため誰の手元に渡ったものが本物の鍵かわからなくなってしまった。



神崎さんと仲直りしたのがきっかけで、何度かトオルに洗脳されて攻めてきた族があったものの、私たちは必死にネックレスのことを漏らさないように守ってきた。

そして、トオルが警察に捕まることもなく、
私たちにとっても大きな事件もなく高校と飛龍を卒業し、

それぞれの道へ進む時期になった。


充実した日々に箱に入れたネックレスの存在をすっかり忘れたまま卒業してしまった。
私は大学へ進学し、そこで百合と出会った。


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