泡沫夢幻


神崎さんに会って、みんなが言葉をなくした。すっかりやせ細った彼女は1人で来た。

メイクできれいに隠されているものの目の下にはうっすらとクマができ、乾いた眼をしていた。

「どうしたの…?」
彩音が心配そうに問う。

「最近忙しくてね、」
そう哀しそうに笑った彼女の腕にまだ新しい無数のあざがあるのを私たちは見逃さなかった。


「トオルか?」
私がその名前を出すと神崎さんはピクっとかすかに反応した。

警察でもずっと追いかけている案件がある。
ありとあらゆる事件でトオルが関係することがわかったとき、
私の上司は新しくトオルに関連する事件だけをかき集めた部署を作成することに決め、私はその部署にぶち込まれたからトオルがどのようなことをしているのかおおよそ把握している。

だけどそんなことも知るはずのない皆はきょとんと首を傾げ、
お互いに顔を見合わせている。

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