泡沫夢幻
「このネックレスは両親の愛です」
私が知らないところで、病気と闘っていた姉の代わりにまだ設立したばかりの両親の会社の跡継ぎになることが決まていた私は5歳の誕生日にこのネックレスとともに私の未来が決まっていたの。
会社の経営や持病を持つ姉、そしてまだ幼かった妹で手いっぱいだった両親は、早いうちから大きな期待をかけてはいけないと思えば思うほど、関わり方、愛し方がわからなくなっていたようで、大学卒業後の進路を考えるにあたり、改めて両親と面と向き合って話し合った時に初めてその事実を教えられたの。
トオルがあんな性格で、あんなことになるのは想定外だったそうよ。
こんな私でも、心から好きになった人がいるの。
そしてその人と結婚することと、その人のもとで副社長になることが決まった。
だけど、これはトオルに仕組まれた罠だった。
神崎さんはそう続けた。