泡沫夢幻


「単刀直入に言うと涼、トオルに目をつけられたわ」

掃除用具を手に部屋に入り、しっかり扉を閉めたところで神崎さんがそう告げた。

「え…?」
わたしは言葉にならない言葉をあげた。


神崎さんはごめん、と呟いて続けた。

「どこからか漏れるはずのない私たちの…いや4代目飛龍の情報が漏れてる。

トオルと夫に洗脳された長女が暴走してるから、あなたもあなたの家族も身の回りに気をつけて」


飛龍は珍しくずっと続いている暴走族だ。私たちの代やその4代後(8代目)頃までは自らの身を守るために力をつけることはしていたものの、重傷者が出るような抗争は起きていなかった。

元々は暴走族ではなく身寄りのない者の集まりだったため、他の暴走族に比べ絆は固いのは確かで、喧嘩の技術的には劣っていたが団結力でいくつもの抗争を乗り越えた。
そして私たちの代のあの事件がきっかけで飛龍の信頼関係はより強まった。

いつの間にか東日本最大規模と呼ばれるようになったのはおそらく抗争を仕掛けにきた人たちが飛龍の団結力に惹かれて傘下に入ったのもあるだろう。まあ詳細は知らないが。

暴走族の入れ替わりの激しい時代があり、
飛龍の正確な過去を知る者はほとんどいなかった。
今ほどインターネットが発展・普及していなかったので実質元ヤンの口頭伝承にすぎない。

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