泡沫夢幻
守りたい
父さんから聞いた話は、とても重たかった。
まるでドラマの世界のような出来事だった。
父さんは曖昧に語尾を濁らせてどうやってそこから脱出したのか、肝心なことは1つも教えてくれなかった。
「奏たちをひいたトラックの運転手、あれトオルらによってクスリ飲まされてたらしい。まあそれ関係で今調査し始めたから
私は明日から仕事に向かう」
父さんはそう言って寝室に戻って行った。
気がつけば壁の時計は11時半を指している。
今から風呂に入って寝て、早く起きれば仕事前の父さんに話を聞けるだろう。
そう呑気に考えながらひとまず俺も自室へ戻ることにした。
正直まだ狙われている実感が湧かない。
映画を見ているような、本を読んでいるかのような、自分には関係のない、そんな感覚。
だけど目の前に置かれた盗聴器と鍵がこれは現実だと訴えかける。
俺の知らない世界で、
俺の知らない真実の歯車が動いていた。
この鍵を持っているから俺は何者かに狙われているのか?
考えても、考えてもわからない。
この鍵は本物ではない可能性だってあるのに。
なぜトオルは俺の持つこの鍵を狙う?