泡沫夢幻


「常盤くん、おはよう」
「あぁ水瀬、おはよ」

玄関で水瀬と一緒になって2人で教室まで行くことになった。


「常盤くん、もしかして彼女できた?」
「はっ? うわっあぶね!」
水瀬が突然聞いてきて登っていた階段を踏み外しそうになる。慌てて体勢を戻すと水瀬はくすくす笑いながら首元を指さした。

「あぁ、これ?」
その指の先には兄貴の形見だと言って父さんからもらったネックレス。


「兄貴の形見。彼女なんていないよ」
そう答えると

「なんだ…」
水瀬はほっとしたように呟いた。

ざわざわした教室の横を通っているので最後の方が聞こえなくて、聞き返そうとしたものの

「やべぇ!!!!
国語の宿題終わってねぇ!!!!」
と朝から騒がしい颯太が横を通り過ぎて一気に現実に戻されてしまった。

後を追うように俺も教室へ急ぐ。

「颯太くん朝から元気だね、って常盤くん?!」
水瀬が何か言ってるようなきかような気がするが今は国語の課題を終わらせなければならない。

水瀬の声に聞く耳も持たずに急いだ。

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