泡沫夢幻
「ここは飛龍の溜まり場。
俺たちは飛龍の幹部。今が何代目かは俺は興味がないから知らん。
飛龍は世間一般的に言う暴走族らしいけど俺たちは先代と同じようにずっと暴力はしてない。やられたら身を守るためには動くけど。
親を信じられない連中の集まりだから柄悪い奴もいるけどみんないい奴だよ」
淡々と説明する耀の勢いに圧倒されてポカンとしているといつの間にか終わっていたらしく、耀は佐野さんを見て笑いながら続けた。
「美玲はこう見えて喧嘩強いから怒らせないよう気をつけてな」
「私が手を出すのは仲間がやられそうな時だけよ〜」
佐野さんは歌うようにそう言って立ち上がり、倒れていた写真立てを大事そうに胸に引き寄せ話しはじめた。
「茜先生…
いやお姉ちゃんは 奏さんの彼女だったの。
奏さんはもちろん、私もお姉ちゃんも飛龍の幹部なの。奏さんやお姉ちゃんに関しては『元』だけど。
耀が正式に飛龍に入ったのは高校からなんだけどね、私はずっとお世話になったから鮮明に覚えてる。
今常盤がしてるネックレス、それは奏さんが旅行前にお姉ちゃんに託したものなの」
佐野さんが見せてくれた写真立てには
確かに茜先生らしき人物と兄貴を中心に複数の男女が写っていた。
兄貴に彼女がいたことはなんとなく知っていた。
だけど未だに暴走族にいたことは信じられない。
どんなときでも大きな怪我はしていなかった。
あ、でもサッカー仲間と遊ぶから!なんて言って休日に出かけて擦り傷だらけで帰ってきてたっけ。
「耀は中学生の時、私を助けてくれて。それから飛龍にくるようになったの」
佐野さんは震えている耀の手を握った。
そういえば耀はいつも俺を心配してくれてたっけ。
耀は佐野さんの手をきゅと握って話し始めた。
「俺は直接は奏さんのことを知らない。
だけどすごい人だったってのはみんなから聞いてる」
耀が飛龍に出会ったのは中学1年の頃。
当時倉庫出入りしてた佐野さんがトオル率いる数人の男たちに連れて行かされそうになったとき偶然通りかかった耀が助け、飛龍に出入りするようになったのだとか、サッカーに打ち込むために正式には飛龍に入らなかっただとか。
当時のことを話してくれた。