泡沫夢幻
「兄貴、ごめんな?ここに来る間に向日葵あげちゃった」
遡ること15分前。
花屋を出てすぐの所にお母さんに抱きついて泣いている女の子がいた。そのお母さんは女の子の他にベビーカーに小さな赤ん坊を乗せていて、困り果てていた。なんだか放って置けずに女の子に向日葵をプレゼントすると、その子は泣き止んで眩しい笑顔を見せてくれた。
「おにいちゃん、ありがと!」
なんてことがあって
手には月下美人の鉢植えだけ。
「兄貴、少しくらい俺にも荷物背負わせてくれたってよかったじゃん」
口を開けばこれしか出てこないくらいに、
父さんの話を聞いて、佐野さんと耀の話を聞いて強く思った。
「だけど俺を守ってくれてありがとう」
もう1度手を合わせてお墓を後にした。