泡沫夢幻
「駿、ごめん」
いつも通り学校に登校すると、もう既にいつメンは集合していて、陽菜がいきなり土下座してきた。
戸惑いながらも話を聞けば補習と部活でいつか約束していたいつメンでのプールと花火の日の前後は拘束されることが決定してしまったのだとか。
色々ありすぎて、慌ただしく過ぎていったここ数日のことはよく覚えていない。
が、気づけば今日でテストが終わり、あと1週間で待ちに待った夏休みが始まるというのに陽菜の口からは続けて暗いニュースが出てくる。
「実は、私だけじゃなくて…」
と隣にいる颯太、ではなく野崎を指さして目を伏せた。
え、まさか学年でも10〜15位以内にいる成績の良い野崎が補習だと…?
なんて思った俺がバカだった。
「待ってよ陽菜、それだと語弊が生まれるから!」
もう、なんてぷくっと頬を膨らませた野崎が私は家の用事でしばらく予定が入っちゃったの、とつっこむ。
「俺ですら補習の呼び出しまだ来てないぞ」
今日の教科のまとめノートやらを読んでいた颯太が顔を上げて陽菜に放つ。
陽菜は眉間にシワを寄せて物言いたげに口を開いた。
「あーもう!
テスト後2教科なんだからそれが終わったら話そう?ね?」
陽菜の口から言葉が出るより先に、そう佐野さんが言った。
今日の教科は現代文と副教科の音楽の筆記。
根っからの文系の陽菜は現代文は得意で音楽はノリで乗り切るんだ!なんて数日前に意気込んでた気がする。
意外にもなんでもこなす佐野さんは音楽が苦手だそうで、颯太同様、まとめノートらしきものを読んでいた。
水瀬はというと、幼い頃から声楽団に入っていることもありただニコニコと俺たちの会話を聞いていた。