泡沫夢幻


「まーたにやにやして!」
椿さんがやっとくっついたのねなんて笑いながら話しかける。
月下美人の花が咲いたことを報告したり、先日の祭りのことを話したりしながら今日も平和な時間が流れる。

次は数日後の花火大会で使用する花の準備があるらしく、束の間の休憩ってとこ。

お客さんもいなくて、店に流れるクラシック音楽をBGMに掃除をしていると店のドアが開いて真っ白なワンピースにポニーテルの女の子が入ってきた。
「こんにちは〜」
その声だけで椿さんも俺も満面の笑みになる。

「こんにちは、椿さん!駿くん!」
愛おしい彼女はそう言って笑った。
「いらっしゃい、ひより」
まとめたゴミをゴミ箱に捨てて、掃除用具を片付けながらにやける頬を押さえて返す。

「いらっしゃい、ひよりちゃん!」
ひよりの手を取った椿さんはにこやかに笑って月下美人の話を始めた。

そういえば椿さん、ひよりのために鉢植え買ってたからなぁ…。咲いた報告をしたら良かったと笑って教えてくれた。まあ本当は俺が買った物が咲かなかった時の保険とか言ってたけど、聞かなかったことにしておこう。


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