泡沫夢幻
掃除用具を片付け終え、椿さんと話しているひよりの元へ麦茶を持って行く。いくらクーラーが効いた涼しい室内でも熱中症になる可能性はある。椿さんが自由に飲んでいいからねとコップを用意してくれていた。椿さんがいつも使っているマグカップにアイスコーヒーを入れて、ひよりには顔見知りのお客さんと長話するときに使っているコップをお借りして、3つのコップを溢さないように慎重に運ぶ。
ひよりの側には月下美人の鉢植えが置かれており、彼女は嬉しそうにそれを眺めていた。
「あら、ありがとう」
椿さんが言ったその声でひよりは慌てて顔を上げる。
「駿くんありがとう」
それぞれにコップを手渡せば温かい笑顔が返ってくる。
そして話題は今度行われる花火大会へと変わった。
まだ付き合っていなかった夏休み前に約束した『花火大会、一緒に行こうね』は有効なのだろうか………
盛り上がっている2人の会話を聞きながら、窓の外に広がる青空に問いかけた。