泡沫夢幻


野崎の言葉の処理がうまくできず、翌日はほとんど無の状態で過ごした。
その日の記憶がほとんどない。なにをしたのか覚えておらず、夜になってバイト…と思ってメッセージアプリを遡ると椿さんからは「今日は休んで」と連絡が入っていて、俺はただ一言「わかりました」と返信していたことに驚いたのは覚えている。

ひよりとは会っていない気がする。
メッセージアプリを見ても、昨日のひよりの「送ってくれてありがとう、おやすみ」という言葉におやすみの返信をして以降、新しく会話は始まっていなかった。

机上には1問目が解きかけの数学のプリントが並べられていて、空腹がとつぜん襲ってきたことからやっぱり今日1日何もしていない、食事すらとっていないことに気づいた。


とりあえずレトルトのカレーを食べて、お風呂に入って。
明日から、がんばろう。
そう気を引き締めて、その日は寝た気がする。




そして気づけば今、花火大会にいる。
ひよりが月下美人をもらってから1週間が経っていた。

ここ1週間、何かを決心したのかもしれないし、やっぱり何もしていないのかもしれない。

もちろんひよりと2人で花火大会へ行く約束をしたこともよく覚えていなくて。
だけどひよりを迎えに、自然に足がひよりの家に向かっていた。

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