泡沫夢幻


とうとう、椿さんから連絡がなく花屋が開くこともないまま、夏休みが終わってしまった。
毎年夏休み終わりは陽菜や颯太をはじめとした皆が俺の家に来て課題消化大会なんてものを開いているけれど、今年はそれがなくて穏やかだった。

穏やかだったけど何か物足りない感じがして、少し寂しくも感じたことは内緒にしておこう。

「駿ー!おっはよー!」
久々の学校で、玄関に響いたのは陽菜の声。

「ちょ陽菜歩くの速いってば」
そしてその後ろから少し日に焼けた颯太が息を切らしてやってきた。

「2人ともおはよ」
いつも通りの2人に安心して一緒に並んで教室へ向かった。
教室に入り、そういえばと思い出し、宿題はどう?と聞くと

「夏休みはこれからさ!」
と颯太は鞄から今日提出の真っ白な課題を取り出した。


「駿、今日の放課後よろしくな?」
前言撤回。全く寂しくない。

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