泡沫夢幻


1日にわたる長いテストが終わり、放課後になった。約束通り、俺は保健室へ向かった。
兄貴と茜先生の交換日記を片手に抱いて。


「失礼します」
コンコンコン、とノックすると茜先生のどうぞという声が中から聞こえてきたので慎重にドアを開け、一言断って中に入った。

「あ、それ…」
俺が中に入るや否や、茜先生は俺の手元を指差してぽつりと呟いた。

「すみません、中少し読んじゃいました」
正直ひよりの名前が出てきて内容はほとんど覚えてないけど、それでも勝手に読んでしまったのは紛れもない事実なので頭を下げて謝った。

「それでひとつお聞きしたいことが…」
茜先生にノートを手渡しながら聞くとベッドのある方からカーテンが空いて、佐野さんが出てきた。

「あ、美玲…」
茜先生はそう呟いて佐野さんを支えた。
そんな佐野さんは血色悪くて、目の下にはクマができていて…

「美玲、今日じゃなくてもいいのよ?」
「俺も、今日じゃ「でも約束したから話さなきゃ」
茜先生が顔を覗き込んで聞いたので、今日じゃなくてもいい、そう言おうとした俺の言葉を遮って、佐野さんはキッパリと答えて、椅子に座って話し始めた。

「私たちは何があってもひよりを守り続けるから」
そう切り出して_______

< 243 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop