泡沫夢幻
ごめん
「ねー駿、今日も家行っていい?」
放課後に毎日のように家に来るようになった野崎は、わざわざ周りに見せつけるかのように絡んでくる。
「ひよりにもあなたの父親にも手を出さないから、
ひよりと別れてわたしと付き合うってのはどう?」
佐野さんと話した後、ほとんど直後に、野崎から提案されて、答えを出すまでにそう時間はかからなかった。
父さんはもうすぐ帰るなんて言ってたのに、
「旦那さまにお使えする期間が長引いた」
とメールを送ってきて。
心が空っぽなまま、ただ時を刻む時計をぼんやりと眺めて耐えることが増えた。