泡沫夢幻


「なあ、ひより」
父さんの運転する車で家に帰る途中、
海辺のレストランで3人で食事をした。

そして、今は父さんにお願いして海に来させてもらったところ。

「なぁに、駿くん」

父さんを置き去りにして2人で海岸を歩く。
午後2時を過ぎていたが海開き前の海には人はいなかった。


「ずっと、黙っててごめんな」
ひよりの少し前を歩きながら

「騙してごめん」
ひとつひとつ言葉を紡ぐ。

「傷つけて、ごめん」
その場に立ち止まり、うん、うん、とひとつひとつの言葉に頷くひよりを待つ。


「それから、ありがとう」
影が同じ場所に来たとき、ひよりの方を向いて笑いかける。



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