泡沫夢幻
角を曲がると、
俺の家の前でふたりの男が取っ組み合いをしていた。
いや、正確には終わった後だった。
黒ずくめの男が
スーツを来た男に押さえ込まれている。
「駿っ!」
息を切らしてよーママが走ってくる。
「駿?」
スーツの男が顔を上げる。
「あ、あんた...」
「と、父さん...」
その声を聞いて、
その顔を見て、
よーママと同時に
そのスーツを着た男の名前を呼ぶ。
男は口を開き、何か言おうとしたとき
パトカーのサイレン音が近づいてきた。
よーママが警察を呼んだらしく、
スーツを着た父さんと
黒ずくめの男は警察に連れられていった。
静けさが戻ったこの街で
またひとつ、時計の針が進んだ。