泡沫夢幻
事情聴取でこの近辺にいた理由を尋ねると
黒ずくめの男は
落としてしまったカギを探していた
と言い張っているそうだ。
なんでここにいるのかは教えてくれなかったそう。
散歩なら素直に散歩と言えばいいのに、
父さんと取っ組み合いになるくらいなのだなら、
そう簡単には言えない理由がきっとあるのだろう。
ここ数日、怪しい人がいたこともふまえ、
しばらくの間、
この周辺を警察が毎日見回りに来ることになり、ひとまず安心だ。
そして、約束の日になり
父さんが帰ってきた。
父さんは暫く休暇をもらったらしく、
平和な日常が帰ってきそうだ。
そう結論付けたこのときの俺は、
もう両足、膝まで浸かっている
"それ" を甘く捉えすぎていた。