不眠姫と腹黒王子
朝御飯を食べ、動物園に行くグループの集合場所に行く。
すぐに宮を見つけた。
宮のそばに行き、肩を叩くと、
振り返ってすぐに目をそらした。
夏祭りのときもそうだったな。
目、逸らされた…。
不思議には思ったけれど、
一旦その疑問は置いといて。
「宮。昨日、ジャージごめん。
私、朝起きたら変態過ぎてビックリしたよ。」
「元からだろ。」
言うと思った…。
「ジャージ、あとで返す。
部屋に置いてきちゃったから…。」
「いいよ。」
「え?」
予想外の返答に一瞬動揺する。
「今夜も持っとけよ。」
「で、でも…」
「てか洗って返すっていう選択肢はないのかよ。」
「あ、それはなかったわ。」
宮は逸らしていた視線を私に向け直し、
私の髪にそっと触れた。
「な、何…」
「今日珍しい髪型してんな。」
「ああ、ハーフアップね。
せっかく寝癖ないんだから、って結にやられた。」
「ふーん…」
宮がいつもと違って、優しく触れたりするから。
いつもと違って、けなしたりしないから。
いつもと違って…ドキドキする。
「ね、ねぇ!ジャージ、返すよ。」
「いらね。」
そう言って、私の髪から手を引いた一瞬、
宮の匂いが香った。
一晩中一緒に眠った匂いに、
私はいつもより敏感だ。
「いつもと違って優しいね。」
「一言余計だっつの。」
ホントは気づいてる。
宮はいつも優しいってことに。
いつも優しく触れてくれるってことに。
「動物園で倒れんなよ。」
ホントは気づいてる。
私の中で生まれた小さな小さな感情に。