不眠姫と腹黒王子




***

旭山動物園に行くグループはまとまってバスに乗り、着くとすぐにグループごとに別れた。

私たちも前が男子・後ろが女子で、
行きたいところを回る。


「次、どこ行こっか。」

結がにっこり篠原さんに笑いかける。

「ペ…ペンギン…とか。」

「え、篠原さんペンギン好きなの?」

「うん、大好き…。」


照れながら頷く篠原さんを見て、
心の中で身悶えする。

可愛い!可愛いっ!
私も、こんな可愛さがほしい!

テンションが上がる反面、表情には全く出せない。


「へぇ、篠原さんペンギン好きなんだ!」

篠原さんの言葉を聞き、
平塚くんが振り返って話しかけてきた。


「うん…。というか、動物全般好きで…」

「へぇ~!可愛いなぁ。」

「じゃあ次ペンギンのとこ行こっか。」

宮も振り返り、営業スマイルで答えた。

「ありがとう…。
ごめんね、私のわがままで。」

「なんで?可愛くていいじゃん。」


宮がそう言って笑いかけると、
篠原さんは顔を少し赤らめて逸らした。


可愛いのは…ペンギンか篠原さんか。

宮は分かっててあえてああいう言い方してるんだろうな。

分かってる。分かってはいるけど。

私は逃げるように宮と篠原さんから目を逸らした。


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