不眠姫と腹黒王子



何…こいつ…。

「いいよ。忘れていい…。あの条件。
そもそも…!契約はとっくに終わってるしな。はは…」

俺は格好悪い言い訳を付け加えて、
ダサい苦笑いをして見せた。


「そっか…いいんだ…。」
「…っああ…。」


「嬉しい…っ」



息が

止まるかと思った。

今まで見たどんな女より
優しく綺麗な笑顔で、円は笑った。


同時に、心臓がとんでもない速さで動き始める。
まるで、今まで眠っていたみたいに。


「あっ、そう。これ、作ってきたの。」

そう言って、呆然とする俺に円は紙袋を手渡した。

他の女子や徹にあげようとしていた包みと違う…


「宮甘いの苦手って言ってたから…
おにぎり!!作ってみた!!」

「おに…ぎ……」

「じゃ、じゃあ!!」

円は俺に紙袋を押し付けると、小走りで教室をあとにした。


「おに…ぎり…」
俺はその場で尻餅をついた。

「はっ…ハハ…」
自分でも意味不明な笑いが口から出てくる。

いや、おにぎりって…
まぁ嫌いじゃねぇけど。
円らしいっつーか、なんつーか。


「ハハハ…ていうか…」

『宮のこと、好きになってもいいの!?』

あれ、もう好きって言ってるようなもんじゃね?


目を閉じて、まぶたに焼き付く円の笑顔を思い出す。

円は眠れるようになって、
逆に俺はようやく目覚めたとでも?

笑えねぇ。


< 200 / 231 >

この作品をシェア

pagetop