不眠姫と腹黒王子
手…あったかい。
幸せだ…。
駅にはすぐに着いてしまった。
宮と一緒の帰り道はここまでだ。
「じゃあ、また明日ね。」
「ああ、また…」
宮はポッケに手を突っ込み、自分のホームの方を見ている。
「照れてんの?」
「はっ!?」
宮は真っ赤な顔で私と目が合うと、すぐに逸らした。
「可愛い。」
「…うっせ。」
「宮、ありがとね。」
「何がだよ。」
「私を好きになってくれたこと。
あと、いじめられないよう守ってくれるのも。」
「好きになったことにお礼言うなんて変なやつ。」
「うん…。
私、いじめられるのとか気にしないからね。
幸い他の人より鈍くできてるからさ。」
「でも…」
宮は今度は私とちゃんと目を合わせると、
割れ物に触れるように優しく頬に触れた。
「鈍くったって傷つくもんは傷つくだろ。」
「……」
うぅ…めっちゃキュンキュンする…!
もともと優しかったけど、こんな大事そうに気遣ってくれるの初めて…
「宮のそばにいれれば、私は幸せだよ。
結もいてくれるしね。」
「……」
私の方面の電車がホームに滑り込んできた。
「お前の好きにしていい。
何があっても守るけど、不要ないざこざは避けたいなら秘密でいい。」
「好きに…していいの?」
「いいよ。」
「うん、じゃあ…!」
私は宮にぎゅっと抱きついて、大きく息を吸い込んだ。
「なっ!?」
「宮吸い~」
「は!?俺はネコかよ!
てか、好きにしていいってそういうことじゃ…」
「ごちそうさま!また明日~」
私は来た電車に駆け乗り、言い逃げした。
窓から宮を見ると、真っ赤な顔をして口パクで「バカ」と言った。
私は一人なのにまた気持ち悪いにやけ声を出してしまった。