不眠姫と腹黒王子
宮side:俺たち
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円と付き合い始めた翌日ーー
「じゃあ今日はあとの時間自習にする。
もうすぐテストだから気ぃ抜くなよー。」
数学の時間、先生がそう言って教室を出ていくと、クラス中がすぐにうるさくなった。
俺たちの関係をみんなに言うか好きにしていいと円に言った。
昨日は宮吸いとか言って話流れたし、
今日は朝あいさつしてから話してないし、
これは黙っておくってことかな。
俺としては正直その方が安心だった。
「恭介、ここ教えて~」
ヘラヘラとしまりのない顔で近づいてくるのは
もちろん徹。
昨日の夜、電話がかかってきて、
徹には円と付き合い始めたことを言っていた。
どうせ今も、勉強聞くついでにからかいに来たのだろう。
「いいけど…」
「あら!優しい!やっぱり余裕あるよなぁ~」
小声で「リア充は♡」と付け加えてきて、
秒で俺の怒りに触れてくる。
「どこ?教えるよ。
(んで早くどっか行け)」
「サンキュー!
(いけず♡)」
こいつ、いっぺん蹴り飛ばしてぇ…
俺がイライラしながら徹に数学を教えていると、
「み、宮…」
弱々しく俺を呼ぶ声が聞こえた。
心臓が大きく跳ね、無意識に他の人に呼ばれたときより素早く顔を上げる。
「円」
そこには数学のワークを持った円と佐竹さんが立っていた。
「宮くん、私たちにも数学教えてくれない?」
佐竹さんがそう言って、円は「お願いします」と呟いた。
「いいけど…俺より円の方が頭いいと思うよ。」
爽やかスマイルでそう返答する。
「ぷっ…優しく円に話す宮くんって変な感じ…」
小声では言ってるけど、佐竹さんも時々イラつくこと言ってくる。
「私最近普通に寝てるから、普通に勉強もできなくなってるの。」
「ああ、そっか。いいよ。座んなよ。」
俺が円たちにそばの空いている椅子を勧めると、
二人は安心したように顔を見合わせて座った。