不眠姫と腹黒王子
そっと目を閉じる。
『寝るな。』
『寝るな。』
『寝るな。』
うるさい、黙れ。
こっちはストレスで死にそうなんだ。
防衛本能なんかに邪魔されてる場合じゃない!
私は歯を食い縛った。
怖い
怖くない!
眠りたくない
眠りたい!
死ぬかも
死んだりしない!
「おい、円。」
「っっっ…!!!」
ハッとなり、目を開けると、
眉間にシワを寄せた宮の顔があった。
「はぁ…はぁ…わた、私…」
「大丈夫かよ…」
「はぁ…はぁ…」
ダメだ。
結局いつもと一緒。
一昨日の体育で眠れたのは、
やっぱり気絶していたからなんだ。
「ごめん。やっぱり違ったみたい…」
「は?諦めんの早いだろ。」
宮は当たり前のようにそう言った。
私の頭を押さえつけると、
汗で張り付いた前髪を左右に掻き分けた。
「お前、寝るってだけで固くなりすぎ。
もっとリラックスっつーかさ、
何も考えずにいろよ。」
「そんなことできたらとっくにやってる…」
「不器用な女だな。」
宮はシャツの袖を挟んで、
私の目を手のひらで覆った。