不眠姫と腹黒王子
「あたし…寝てた?」
「え、あ…あぁ!寝てたよ。」
慌てて作った爽やか笑顔に、
円はキョトンとした。
しかし、気にする風でもなく、
だるそうに身体を持ち上げる。
「そっか……っみ、宮。」
「何?」
「私、普通だよね?
寝てたとき変じゃなかったよね?
今も…」
円は身体をこわばらせ、
小刻みに震えていた。
唇は真っ青だ。
あんなにさっきまで強そうに見えていたのに、
今は崩れてしまいそうに見える。
こいつをここまで追い詰めている原因はなんだ?
不眠症って…
一体どれくらい眠れてないんだろう…。
円に興味を持っている自分にハッとなり、
慌てて心を冷ました。
「変じゃないよ。なんも。」
「そっか。」
そう言うと、円はうつむいた。
表情を見ることはできないが、
うつむく先にポツポツと水滴が落ちた。
なんで、泣いてるんだ?
そう聞こうとして、口をつぐんだ。
慰めたりはしない。
泣いている理由も聞かない。
でも、俺はその場から動かなかった。