狼の愛したお姫様


「なんか聞こえるな。」

少し人気のない道を通る時、冬真が立ち止まりそう言った。

耳を澄ますと確かになにか聞こえる。



「喧嘩かなぁ?」


無意識なのかなんなのか、遥の口角が上がった気がする。



「僕ちょっと行ってくるね。これ頼んだよ冬真」


袋をドサッと置いて、遥は裏路地へと入っていく。



「心配しないでいい。遥はああ見えて強いし。」

確かに遥も、冬真たちも強いんだろうけど……



「…暴力が嫌いか。」


私の気持ちを察してか、冬真は私の耳を塞いだ。



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