狼の愛したお姫様
───その時。
「叶望からだ。」
電話が鳴った。
ディスプレイには「叶望♡」の文字が見える。
「命拾いしたね、君。」
叶望には汚れた手で触れられないもんね。
「さっさと視界から消えてくんない?…気が変わんない内に。」
鉄パイプを投げた音にまたビクつき、男は走って逃げていった。
「もしもし?珍しいね。どしたの?もしかして心配してくれた?!」
『大丈夫そうですね。俺の電話になら“お楽しみ中”だったら出ないでしょうから、叶望の携帯を借りただけです。』
やっぱり湊都はよくわかってるなぁ。