狼の愛したお姫様
No side
当時の姫野 叶望は12歳。
多感な時期で、でも反抗期というものはなかった少女だった。
でもそんな純粋無垢な彼女を環境は簡単に捻じ曲げていった。
「お母さん、ただい───」
叶望はカバンを落とし、その光景をみて絶句した。
「叶望、おかえりなさい…」
倒れる母親、その横には何事も無かったかのようにタバコをふかす父親。
「わかったなら早くこれに判押せ。」
ヒラヒラと倒れている母親の前に舞ってきた紙は“離婚届”。