狼の愛したお姫様
それを拾い、叶望はぎゅっと抱きしめた。
「叶望、何をしているの…?」
叶望はタンスの引き出しなどを片っ端から開けて、“あるもの”を探していた。
「印鑑、探すの…」
離婚届の意味も、それに判を押すという意味もわかっていた叶望は必死に探した。
「やめなさい叶望!!」
温厚な母親が怒る姿は初めてだった。
「おかあ、さ……」
そして泣き出す叶望に父親は舌打ちをひとつして、家を出ていった。