狼の愛したお姫様
「おい、叶望。」
…こういう時ばかり名前を呼ぶんだね。
でも多分、これで呼ばれるのは最初で最後かな。
「こっちへ来い。」
前にいる怜、少し離れた後ろには遥。
逃げても捕まる可能性の方が高いし、なにより私は逃げられない。
「…怜、約束、守ってね。」
目の前にいる怜に、つぶやくように言うとニヒルに笑った。
「俺は約束は破らねぇ。」
怜との約束は、私が怜との約束を守ったら皇華の皆には手を出さないという約束。