狼の愛したお姫様
唯一無二
遥side
───最初から気づいてた。
「だから皆、寝たフリしててよ。」
反対する奴もいた。
寝たフリするくらいなら、止めてしまえばいいと。
…でも。
「それは叶望の本意じゃない。」
どうせ脅されてるんだろう。
僕達に迷惑をかけないように、とでも考えているのかもしれない。
「…でも、必ず連れ戻す。」
向こうに渡すわけがない。
ただ、一度この手を離すだけ。
…一度だけだから。