狼の愛したお姫様
「…あ。」
部屋に戻ろうとすると、ばったり冬真さんと会った。
「え、えっと…冬真さん、小説読んでる時お腹なってたから…」
そう言うと、やっぱり気づいてなかったのか冬真さんはため息をついた。
「…ごめん、いらない。」
なんかこの感じ…少し、思い出す。
「でも…」
「要らねぇって言ってんだろ。」
大きな声が、完全に重なった。
“ごめんなさい…”
まだあれは、私が怜に嫌われるのを恐れていた頃。