狼の愛したお姫様


「ん…」

「目、覚めたか」


その距離は近くて、咄嗟に距離をとった。




「いい。ちょっと話したいことあるから近くに来い……いや、来て。」


気まづそうに手招きをされて、少しずつ近寄った。

近づく度に握りこぶしに力が入るのが見えて、少し遠慮をしたけど。




「…悪い、要らねぇなんか言って。」

掠れた声で言われ、胸が締め付けられた。



「あれは、私が勝手に作ったから…私が悪いんです」


…そう、私が勝手にしたこと。
だから冬真さんが謝ることじゃないのに。





「そうやっていつも、自分が悪くないのに謝ってんのか?」



すべてを見透かされているようで、少しだけ怖くなった。




< 80 / 213 >

この作品をシェア

pagetop