狼の愛したお姫様
「これが俺の過去。…そして、その時つけられた傷。」
横腹にあった傷は、今も痛々しくそこにある。
「…っ、」
その傷にそっと触れると、冬真さんは震えた手で私の腕を掴んだ。
「あんまり、見るな。…女が見るもんじゃねぇから。」
顔は逸らしているから見えないけれど、きっと冬真さんは泣いてる。
「…ありがとう、ございます。」
“ごめんなさい”を飲み込んだ。
きっと冬真さんが欲しいのは意味のない謝罪じゃないから。