狼の愛したお姫様
「れ───」
『ごめん。』
「え…?」
まさか謝られるとは思わなくて、拍子抜けした。
それも、あんなに悲しそうな声で。
『ごめん、叶望』
名前を呼ばれたのはいつぶり?
それすらも思い出せないくらい昔なんだろう、きっと。
「…………」
何も言えない。
「ごめん」で許されることではないし、許す気なんてないから。
『…頼む、帰ってきてくれ……』
その掠れた声が耳元で聞こえると過呼吸を起こしかける。