廻天の王女と太陽の騎士は穏やかに恋をする
「そろそろ良さそうね。」

しばらくしてから、母がそう言って、スマホを触りました。



「あらあら。」

すると、スマホからひっきりなしに軽い音が鳴り響きました。



「どうしたのですか?」

「メールやLINEを受信したみたいです。」

それらが、遠くの人とも連絡が取れるものだということは知っていました。



「こんなにたくさん…」

母は画面を見ながら、瞳を潤ませていました。



「……私にも見せてもらえますか?」

私がそう言うと、母はスマホを私に手渡してくれました。



(あ……)



そこには一方的に文字が書かれていました。
親友の安倍まどかさんからの文字です。



『紗季、返信ないけどどうかしたの?』

そんなことから始まり、家に連絡をして入院したことを知ったとか、お見舞いに行きたいやら、LINE見たら連絡して!等、たくさんの文字が連なっていました。



「困ったわね。どうしたら良いのかしら…」

「あの…もうしばらくしたら、返信して良いでしょうか?」

「え?」

「……文字はだいぶ覚えましたが、それだけではやはりまだ無理でしょうか?
シャキアのことをこんなに案じてくれているのですから、何か返してあげたいのです。」

母は優しく微笑みました。



「そうですね。
治療の副作用で記憶が曖昧だということにして、返信するのも良いかもしれませんね。」

その言葉に、私はなんだかほっとしました。
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