廻天の王女と太陽の騎士は穏やかに恋をする
シャキアの言ったことは、嘘ではありませんでした。
絶対に治るはずがないと思い込んでいた私の体は、こちらに来て、明らかに回復し始めたのです。

そんなある日のことでした。



「……内山さん?内山さんじゃないの?」

サンドラと一緒に売店に行っていた時、私は見知らぬ女性に声をかけられたのです。



「え……?」

どう答えたら良いのかわからず、私はただ曖昧に微笑みました。



「まさか同僚の私を忘れたの?」

女性は怪訝な顔をして、私をみつめました。



「すみません。紗季は薬の副作用のせいで、以前の記憶がはっきりしないのです。」

サンドラが咄嗟に助け舟を出してくれました。



「えっ!?副作用でそんなことが…?
私、三辺です。庶務課の三辺ゆかり。
思い出せない?」

「す、すみません…」

元々知らない人なのですから、思い出す道理がありません。



「そう…残念だわ。あなたとは何度かランチにも行ったことがあるのよ。
それにしても、内山さん…だいぶ痩せたみたいだけど、大丈夫なの?」

私は入院してから、数キロ太ったというのに、そんなことを言われてしまいました。



「はい。なんとか…」

私にはそう言うしかありませんでした。
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